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昔、学生時代に長野県などで民話の調査をしていましたが、地元に伝わる話で一番多く聞くことが出来たのは、「きつねに化かされた話」でした。

大雑把にいえば、たぬきも人を化かすようで、地元では昔から「山に行くときつねやたぬきに化かされるから気をつけろ」というような戒めがあるようでした。

でも具体的な話になるとなぜか山で人を化かすのはいつもきつねで、そういう話ばかりでした。

山は一人で行くと道に迷ったり、さまざまな危険があるから気をつけろということなのでしょうが、その題材はいつも彼らが悪役になるという設定でした。

それはおそらくまず昔はきつねやたぬきはひじょうに身近な動物で農作物を荒らしたりするほか、いろいろな習性にあるのでしょうが、大きな理由として考えられるのはその風貌にもあるのでは、と思っています。

もっと具体的にいえば、人間にも風貌がきつねやたぬきを連想させる人が数多く見られます。
それが長い歴史の中で、きつね顔の人は狡猾でずる賢く、たぬき顔の人は感情を表に出さないおとぼけタイプというイメージがこびりついているのではと思います。

私も仕事柄数多くの人と接しますが、そのようなイメージで先入観をもってしまうことも多々あります。

実際にはそうでないことも多いわけですが、意外にこのような昔からの言い伝えなどは馬鹿にできないことも多いのではとも思っています。

やはり長年の気の遠くなるような経験則の中で一般的な傾向というのは定着していくわけで、あながち間違っていないのかもしれません。

これはたとえ話ですが、現在の人間社会においてもこんなことがあるかもしれません・・

きつね顔の男の話

これは昔、昔・・・ではなく、現代、現代の話です・・

ある日私は仕事で不都合が生じて、取引先のA社という会社にクレームをつけました。
そして相手の会社A社の担当者と面談することになりました。

応接間に通されて待っていると・・

応接間に担当者が入ってきました。

顔は何となくですが「きつね」っぽい顔つきです。

担当者:「いやー、このたびは申し訳ありません」

私:「それじゃ困るんだよ、どうにかしてくれよ」

担当者:「それではこんな案でどうでしょうか?」

きつね顔の担当者は「ニヤッ」と笑いました。

ちょうどきつねが人を化かして、得意げになった表情に似ているように感じました。

{こいつ、おれを化かそうとしているな・・}

私:「お・おれは騙されねえぞ!、お前のようなきつねみたいなやつにはな・・」
と思わず言ってしまいました。

担当者は私のあまりに乱暴な予期しない反応にびっくりしました。

「いや、え・え・え・えー、そんな・・・・・こと言わないでくださいよ」と言うと、うろたえたせいか咳き込んでしまいました。
「コンッ、コンッ、コンッ!」
ちょうどきつねの声のように・・

それを見た私は、
「そおれ見ろ、やっぱりお前はきつねだな。」

担当者:「何をおっしゃってるんですか。私は誠心誠意申し上げてるんです。信じてください!」

私:「いや、お前はきつねだから信じられねえな。本当は後に尻尾があるんだろ?立ってみろよ」

担当者:「まさか。では見てくださいよ」

担当者はスッと席を立ち後を向きました。
そこにはズボンがあるばかりで、尻尾のようなものはありませんでした。
ただ、しばらく座っていたので、すこしズボンが空気でふくれていました。
ちょうど尻尾を隠しているように・・

私:「ほら、やっぱりそのふくらみは尻尾隠しているんだろ?白状しろ、このきつね野郎!」

担当者:「いいえ、けっしてそんなことはありません。私はきつねなんかじゃありません。それだったらズボンも脱ぎますから・・」

というと担当者はズボンも脱いでしまいました。

するとそこには立派な尻尾が・・・
なんてことはなく、擦り切れかかったパンツしかありませんでした。

担当者はすでに顔を紅潮させていました。

{まずい・・。きつねじゃなかった、どうしよう・・。でも本当は尻尾があるはずなのに・・}

私は本来文句を言いに来たのに、逆にどうしようもない状況に追い込まれてしまいました。

「いやあ、そうだね。尻尾はないね・・」

私はそそくさと逃げるように退散しました。

会社に帰ると、早速上司に呼ばれました。
上司:「今な、A社から連絡があってな。わかるだろ?何で呼ばれたか」

私:「いや、いえ、あの・・はい。何でこんなことになってしまったんでしょうか。やっぱり私が悪いんですよね?」

上司:「そうだな。おおかたきつねにでも化かされたんだろうよ!」

うーん、やられた・・

☆☆☆☆☆